1998年5月6日
「 Keep Wangdue Clean 」をうたい文句に、ゾンダ(県知事)の強力な指導のもと、きれいな町造りが進んでいると思っていた、住んで1ヶ月半になる現在の出張地ウォンディの町であったが「実はそんなにきれいではないな」と最近よく感じるようになった。
表面上は、毎日道路に「水まき」をしたり、ゴミ箱を町のいたる所に設置したりしていて、ここに数時間しか滞在しない観光客からすれば、ブータンの中でも一番きれいな町の1つなのかもしれない。しかし、先日4月24日と28日に町並みの裏側でケーブル架線工事をやった時に、私の中の「きれいな町」というこの町のイメージは吹っ飛んでしまった。
というのは、町並みの裏側の地帯は現地住民たちの排泄場となっていて、「便」がいたるところに転がっていたのだ。パロやプナカでも汚い場所はあるにはあったが、ここまで自分の気分を悪くさせた場所はここをおいて他にない。「なんだこの場所は!」と唖然とした。
さらに最悪なことに、この両日の朝激しいスコールが降ったために、我々がこのエリアを通った時は、ムッとした水蒸気に混じってものすごい異臭が襲ってきた。雨で足場も悪く、ドロが靴にへばりついてどんどん重くなっていくし滑りやすい。もし滑って転んだりすれば、このうんこたちのえじきとなってしまう。
また、公衆便所のすぐ裏も通過した。公衆便所では、首都ティンプーのドアがなく「仕切り」だけしかない中身に驚いたものだったが、ここウォンディの公衆便所は、小川の上にできており、いわゆる「自動水洗」で、内部にはティンプーにはあった「仕切り」や「男女別」も無く、ただ穴だけだった。この辺は、中国山村地帯のことを決して笑えない。
つけ加えると、この町では女性でも道端で平気に用を足している。もちろんブータンでも地方の町ならではの光景で、日本人の私は最初驚いたものだった。
新設の通信ケーブルは、通信柱に金車をつけた後、人力で引っ張っていく。それでも10Pや20Pだったらまだ軽くていいのだが、このルートに用いたケーブルはなんと200Pの図太くて重いケーブルだったので、たまったもんではない。この架線作業において、ケーブルを地面につけないように引っ張っていくことは不可能なので、ケーブルは地面に触れるにつれて、ドロだらけ(うんこだらけ)となっていった。
まさに、うんこまみれの重いケーブルをチームみんなで引っ張っていったこの光景は、私はもちろんブータン人メンバーたちにも「もう2度とこんな場所ごめんだ!」と、うならせた場所であった。
しかし、考えて見れば、このウォンディには下水設備が全く無いし、一般住民は水道を引いていない。朝、昼、晩、合わせて1日6時間ほどしかでない、共用の水汲み場を利用しているのが現状である。したがって、トイレの無い家がかなりある。
一般的に先進国において、都会(人の多く住んでいる場所)は上水・下水などのインフラストラクチャーの整備が進んでいるため、郊外よりきれいな場所というイメージになるが、インフラの発達していない発展途上国においてはこれが反対となることが分かった。ここでは、郊外のような人が入らない自然のままの場所の方が景色も風もさわやかであり、一番汚れた汚い場所というのが、人の住んでいる家々の裏側なのだ。