山国ブータン王国−36(ビデオ鑑賞)

1997年11月30日

 ここブータンのアンバランスなところは、民族衣装やブータン建築などのブータン独特の伝統を尊重しているのに、一方ではビデオが以外と普及し、どの町にもレンタルビデオショップがいくつかあることである。ブータン政府のマスコミ制限政策によって、テレビ放送は全く無いのだが、一般階級の人達は、案外テレビを持っている。それは、ビデオを見るためのテレビなのである。今、ブータンで最大の室内娯楽は、ビデオで映画を見ることといえよう。

 ビデオは、一部英語やネパールものがあるが、8割がインド映画である。ブータン人は町のレンタルショップで1晩10Nu(約35円)でこれらを借りて見ている。アダルト系は、この国では厳しく禁止されていて、店の中を探したが全く無かった。

 私は先月11月に、出張生活で毎晩退屈している工事メンバー達の要望を聞いてやり、テレビデオとスタフィライザー(電圧安定器)を調達してやった。電圧安定器は、この国の電圧変動が激しいため(特に停電が回復する時)、電気製品を使用する時には必需品である。これがないと、テレビ自身がすぐいかれてしまうらしい。

 メンバー達は、ビデオを見てみんな歓喜した。すぐにテレビ台を木で作ったり、日中はカバーをかぶせたりして、普段ぜんぜん物を大切に扱わない彼らが、それを大切に扱う姿には笑えた。それ以来、彼らは好きなテープを町で調達してきて、毎晩我々のタコ部屋の中は映画館と化している。

 ブータン人が一番好きなのは、ずばりインド映画である。が、私に言わせればこのインド映画ほど、つまらなく退屈する映画はない。画面の下3分の1には、CMが入れ込んであって画面がみにくいし、さらによく5分間のCMがはさまってくる。内容もストーリがあるらしいのだが、歌って踊ってばかりでちっともおもしろくない。これが延々と3時間半も続くから、もう1回見ただけでいやになった。

 それにしても、ブータン人の語学理解力はすごいと思う。インド映画は、ヒンズー語である。「君たち、ヒンズー語理解できるの?」と尋ねると「うん、ちょっとね。」「なんで理解できるの?」「映画見たいから勉強した。」と答える。す、すごい!

 九州ほどの大きさの小さな国なのに20の言語が存在し、さらにほとんどの製品や書物はインドなどの近隣国から入ってくるために、小さい頃からいろいろな言語に接していることもあるが、日本人の我々のように小さい頃から日本語だけで不自由しなかった者は、とうていブータン人にはかなわないなと思った。

 最近は、近所の住民までが夜映画を見に来るようになった。映画はおもしろくないし、ボリュームガンガンで部屋の中はとてもうるさい。出張の夜を楽しく過ごそうとして持ち込んだテレビデオが、逆に静かな夜を無くしてしまい、ビデオが終るまでは寝ようにもうるさくて寝られず、泥沼にはまったような感じである。

 完全に自分で自分の首を締めた格好になってしまった。



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