山国ブータン王国−33(寒い夜)

1997年11月2日

 さ、寒い! 特に夕方6時をすぎると、ぐっと冷え込んでくる。宿にしている建築中の局舎から見える、近くの山の頂上はもう雪で白くなっている。

 一緒に寝泊まりしているメンバーの1人に、「ドルジ」という17、8才の男がいる。彼は正規の局員ではない。ある日作業中に、ひょこっと表れて作業を手伝いはじめ、いつのまにかメンバーになっていた。彼は、どうも浮浪者のようだ。荷物も何も持ってなく、服はいま着ている1着だけで、またそれはめちゃくちゃ汚い。学校には行ってないらしく、全く英語が通じなかった。

 作業を終えて、晩飯ができるまで約2時間ちょっとの時間(だいたいいつも夜8時くらいに食べはじめる)をいつも寒い思いをしながらみんなで部屋の中で待つ。この時間帯は、とてもお腹がすき、ひもじい気分になる。本を読んでいても寒いので長く続かず、外に出ても店は全くないし、かといって寝るわけにもいかず、とても苦痛な時間帯である。お金があるからといっても、このときは全然役に立たない。この時の私は、はっきりいって「浮浪者ドルジ」と同じレベルになっている。

 飯の準備が整うと、お腹をすかしたメンバー達が、私も含めみんな一斉に自分の皿を持って飯をもらいに行く。この姿がまた悲しく、自分自身も「どうか私に食べ物を恵んでください。」といった姿に見える。そして、私が並んでいる所に、ドルジに割り込みされて先に食べられた時には「俺もここまで落ちたか」と、心の底からむなしくなった。

 食後は外に出て自分の皿を洗い、寒いのでさっさとシェラフにくるまる。

 1997年10月31日金曜日、日本から通信網プロジェクトのフォローアップ調査団が、ここパロの局舎を訪れ、私達の暮らす部屋を見て、一言私に「が、がんばってください」と苦笑いしながら声をかけて、次の現場に移動しようとした。「やい、おまえらも、一泊くらいここに泊ってみろ!」と心の中で思ったものの、「はい、がんばります」と心にもない笑顔で彼らを見送った。



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