1997年9月5日
先日、新規加入者線の引き込み工事に一緒に現場にでた。
彼ら(私の同僚)の作業を見た第一印象は「君たち、とび職なの?」であった。足場ボルトもない素柱(通信用なので高さ約6mといったところか)をスルスルと柱のてっぺんまで登り、既設のケーブルを足場にして、もちろん胴綱もなしに作業する姿に私は感動した。また、通勤途中で見た配電線作業でも、同じように裸足で配電柱(地上約12m)のてっぺんで作業していた。どうやらこの国は、胴綱や安全ロープを全く使ってないようだ。
彼らは、木登り・柱登りがとてもうまく、バランス感覚もあり柱上での安定性は抜群にすごい。「私も手伝うから、登るコツを教えてくれ」と言ったら、「君には登ることができないと思う」と言って教えてくれなかった。見ていると、どうやら木により楽に登るコツは「裸足」で登るのがBESTなようだ。そういえば、小学校時代運動場にある「登り棒」を登る時、やっぱり裸足が一番登りやすかったのを思い出した。
加入者線の引き込みで、新しく電柱を建てることはしないので、もし分岐BOXからちょっと離れた家まで引き込む時は、木や他人の家に線をくくりつけながら持っていく。装柱金物なんて贅沢なものはないので、すべてケーブル自身で結びつけて固定している。引込線工事における彼らの持ち物は、加入者ケーブル・確認用電話・ニッパーとたったこれだけである。線の皮はもちろん歯を使ってで剥き、電圧(48V)の確認は彼らの親指と中指に「つば」をつけて確認する。また、保安器は電話局内の交換機側にはついていたが、加入者側には何もつけていない。
しかし私は思う。彼らは思った工具や材料が手に入らない状況の中でよくやっている。この国には、通信用工具や材料を作る工場は無い。買う予算も無い。従ってそれらは、すべてインドもしくは日本からの援助によって手に入れるしかない。
一方、このような工事のときは、彼らはバイク(スクーター)に2人乗りで現場に向かう。バイクにたくさんの荷物は積めないので、脚立さも持っていけない。本当に最低限の物しかもっていけないのだ。
このような作業をしていて、一番心配なのがやっぱり、転落・感電事故である。「さるも木から落ちる」という諺もあるように、いくら木登り・柱登りがうまくても彼らもやっぱり人間であり、完璧ではない。また、ブータンの架空配電線は、ケーブルでなく裸線を使用しているため、感電事故の危険性も高い。通信線と配電線が接近している個所は多々ある。しかしながら、このような状況の中でも彼らは手袋(皮手)さえも使わず、人によっては素足・素手で作業している。この状況はとても危険だと思っている。